モラルハラスメント
モラルハラスメント(モラハラ)とは、「モラル(道徳・倫理)」と「ハラスメント(人を困らせること、いやがらせ)」を組み合わせた言葉です。
要するに、モラルハラスメントとは、道徳・倫理から外れたいやがらせのことを指します。
モラハラは、主に家庭や職場内などで発生します。
特に、近年モラハラを原因として離婚をする夫婦が増えてきています。
裁判所が調べた、平成30年度司法統計(19 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所)によると、離婚事件の申立て人別の原因は、
離婚原因 | 男性 | 女性 |
1位 |
性格の不一致 (60.9%) |
性格の不一致 (39.1%) |
2位 |
精神的虐待 (19.7%) |
生活費を渡さない (29.4%) |
3位 |
異性関係 (13.8%) |
精神的虐待 (25.2%) |
(離婚原因「その他」を除く)
となっています。
モラハラは、上記グラフのなかの「精神的虐待」が当てはまります。
つまり、男性の離婚理由の第2位、女性の離婚理由の第3位がモラハラなのです。
ちなみに、女性の離婚理由第4位が「暴力を振るう」、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)にあたります。
モラハラによる離婚が、DVよりも多いことがわかります。
実際、弊事務所にもモラハラを原因として、離婚の相談に来られる方が多数いらっしゃいます。
本記事では、
◯モラハラとは
◯具体的にモラハラってどんな行為?
◯モラハラ離婚で大変な点
◯モラハラは証拠を残すことが大事
についてご説明します。
モラハラとは
モラハラとは、「道徳・倫理から外れたいやがらせ」だと先程説明しました。しかし、この説明だけでは、どのようなものかイメージがつきにくいかと思います。
もっと簡単な言葉を使うと、「殴る・蹴るなどの暴力を使わない、精神的な嫌がらせ」です。
裁判所の統計などでは、「精神的虐待」という言葉を用いています。
いわゆるDVでは、暴力を用いることでパートナーを支配したり管理したりしようとします。一方、モラハラでは、言葉や行動、態度によってパートナーを追い詰め、支配しようとするのです。
支配しようとする手段が違うだけで、モラハラはDVの一種とも言えるでしょう。
モラハラの傾向としては、被害者本人が「自分は被害者である」という意識を持ちづらいというものもあります。
加害者は、被害者のちょっとしたミスや欠点を責めます。よって、被害者は「自分が悪いのでは?」「自分のせいなのでは?」という思考に陥ります。
結果として、自分がモラハラ被害者であるという意識が消え、むしろ自分のせいで夫婦の仲が悪くなっていると思ってしまうのです。
また、被害者が一念発起して離婚しようとしても、加害者側が応じないケースも多いです。
加害者がモラハラを行う理由として、パートナーよりも優位な立場に立ちたいという意識がありますから、被害者側からの反発に対して嫌悪感を持つのです。
「離婚には応じない。もう一度うまくやっていきたい」という態度を取る加害者と、「離婚はしてやるが、不可能に近い条件をつけてやる」という態度をとる加害者が多くいます。
被害者としては、このような態度を取り続けられると話が全く進まなくて困ってしまうかと思います。
そのままでは離婚までこぎつけるのがとても難しくなってしまいますので、弁護士など第三者を挟むのも1つの手です。
モラハラの具体的な内容
「暴力を使わない精神的な嫌がらせ」とは、具体的にどのような行為のことを指すのでしょうか。
一部の例を以下にあげていきます。
◯家事の不完全なところを探し、「一体何をやっているんだ」と責める
◯「誰のおかげで生活できていると思っているんだ」といった趣旨のことを言う
◯パートナーの前でため息や舌打ちをする(機嫌が悪いことをアピールする)
◯ちょっとしたきっかけで怒り、そのまま無視をする
◯反論すると、「そうさせたお前が悪い」と責任転嫁する
◯ドアを勢いよく閉める、リモコンを投げるなど、物に当たる
上記の例には、直接の暴力などは一切ありません。しかし、この言動をされた被害者が、精神的な苦痛を感じることは明らかです。
モラハラ離婚の大変な点
モラハラを原因として離婚をするのであれば、2つの課題について理解しておくべきです。
2つの課題とは
◯加害者が離婚に応じない
◯証拠がないので、モラハラを証明できない
です。
まず、先程も説明しました通り、モラハラ加害者が離婚に応じない場合が考えられます。
相手が協議の場に出てくれないと、こちらとしては離婚を進めていくことができません。
裁判となれば、相手が出席しなくても進めることができますが、その分準備が複雑になります。
場合によっては、到底飲むことができないような条件を提示してくる場合もあります。
口では、「離婚に同意する」と言っていても、無理な条件をつけることで最終的に離婚を回避しようとするのです。
また、普段の喧嘩のなかで「離婚する」という言葉を使う人もいますが、感情が昂ぶって相手を威圧するつもりで言葉が出ただけであり、本当に離婚手続きを進めようとする人は少ないです。
こういう相手の場合も、離婚にこぎつけるまでになかなか時間がかかると予想されます。
また、モラハラ被害者自身が加害者に対して恐怖心を持っているケースが多く、実際に本人を目の前にすると萎縮してうまく話せなくなる場合もあります。
総じて言えるのは、モラハラが原因の離婚は当事者同士の話し合いが難しいということになります。
続いて、モラハラは証拠がなく、証明が難しいという課題もあります。
たとえば、DVであれば殴る・蹴るなどの暴力があり、被害者の体に痕が残ります。病院で診断書をもらうなどすれば、立派な証拠となります。
しかし、モラハラは言動や態度によって被害者を追い詰めるものです。なかなか証拠を用意するのは難しいでしょう。
決定的な証拠がなくても、協議離婚や調停離婚といった手法を取れば、離婚が成立する可能性はあります。
(協議離婚とは裁判所を通さずに当事者同士で話し合って離婚手続きを進める手法です。また、調停離婚とは家庭裁判所を通じて話し合いをしながら離婚を進める手法です。)
しかし、先述しましたとおり、モラハラ加害者は自分に非があるとは思っておらず、話し合いに協力的でない場合が多いです。
話し合いを中心に離婚を進める、協議離婚や調停離婚ではスムーズな進行はできない可能性が高いのです。
証拠の集め方
モラハラは証拠が残りづらいというお話をしました。しかし、あれば今後の話し合いや手続きにおいて有利になることは確実です。
できる範囲で証拠となるものを集めておくのがよいでしょう。
証拠として集めた方がよいものの例を以下にあげます。
◯加害者からモラハラを受けているときの録音や動画
スマホやボイスレコーダーなどを使って、録音録画したものがあれば協議や裁判で有利な証拠となる可能性があります。
◯相手から届いたメールやLINEメッセージ
メールやLINEで厳しい言葉を投げかけられることもあるかと思います。
見ていて気が滅入るものなので頻繁に消してしまう方もいますが、証拠となる可能性があるので、残しておきましょう。
◯メモや計画表など
モラハラ加害者のなかには、被害者に対して厳格に決められた予定や計画表、指示内容を記したメモなどを渡すことがあ
ります。それも、内容によっては立派な証拠となり得ます。
◯日記など
毎日のようにモラハラ行為があるのであれば、日々の加害者の言動を記録したものも証拠となる可能性があります。
相手がどのような発言をして、どのような行動をしたのか、などをできるだけ詳しく書いておくと、信ぴょう性も高まり
ます。
◯心療内科への通院記録や診断書
加害者のモラハラ行為により、精神的な負担が大きくなると「うつ病」などを発症する方もいらっしゃいます。
もし精神科や心療内科へ通院したのであれば、その記録が証拠となる場合があります。診断書がある場合も同様です。
モラハラでお悩みなら弊事務所へご相談ください
モラハラに悩まされて離婚を検討されている方は、ぜひ弊事務所へご相談ください。
ご依頼いただければ、弁護士があなたの代理人として離婚手続きを進めていくことができます。
特にモラハラ被害者の方の場合、当事者同士での話し合いがうまくできない場合があります。
・相手が怖くてうまく話せない
・話し合いを進めようとしても、相手が応じない
・相手が自論をひたすら話すだけで、こちらの意見を一切聞かない
などのケースがあてはまります。
このようなお悩みであれば、第三者である弁護士が間に入るだけで話し合いがスムーズに進む可能性が高まるのです。
もし、協議で話がまとまらなかった場合は、離婚調停や訴訟のサポートも致します。
自分で頑張って進めていきたいが、弁護士に相談相手になって欲しい方には、バックアッププランなどもご用意しております。
初回のご相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。