浮気と離婚について

浮気と離婚について

日々離婚の相談にあたる中で、パートナーの浮気の発覚が離婚を決意したきっかけだとおっしゃるお客様が多くおられます。ただ、一言で浮気の発覚といっても、どこまでの証拠が掴めているのか、という点が離婚の成否に影響を及ぼします。   そこで、今回のコラムでは、そういった浮気と離婚の関係について考えてみたいと思います。   ここで、浮気の法的な位置づけについて確認したいと思います。   民法770条1項1号は「不貞」を離婚原因として挙げています。つまり、離婚の問題が協議や調停といった話し合いの手続きでは解決することができずに裁判に発展した場合には、パートナーの「不貞」を証明することができれば、裁判所は離婚を認めてくれるということになります。ここでの「不貞」とは、「配偶者のある者が自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」を言います。つまり、裁判になった場合には、パートナーが自分以外の第三者と自分の意思で性的な関係を持ったことを証明しないといけません。 それでは、性的な関係に至らないものについては離婚の原因にならないのかというと、決してそうではありません。同じく民法770条1項5号は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」というものを離婚の原因として挙げています。ここでは、必ずしも性的な関係を結ぶことまでは要求されておらず、極めて紛らわしい行為がされ、それが夫婦の信頼関係を決定的に破壊するものであれば、裁判所は離婚を認めてくれるのです。   それでは、ここからは、具体的にどういうところまで証拠が掴めていれば離婚が成立するのかを見ていきたいと思います。なお、ここでは、調査会社に依頼して写真付きの報告書が手に入ったという場面をイメージしていただくとわかりやすいと思います。  

ケース①

「夫が仕事帰りに女性と待ち合わせて食事をし、腕を組んで電車に乗り、女性のマンションに入って翌朝まで出てこなかった場合」   この場合、腕組みしていることから2人がかなり親密な関係であることが理解できます。そのような男女が女性の自宅というプライベートな場所で一晩を共にするわけですから、2人の間に性的な関係があると言われても仕方ありません。ですので、夫には「不貞」ありということで、裁判において妻による離婚の主張が認められる可能性は極めて高いと言えます。  

ケース②

「2人でラブホテルに入って、約45分後に出てきた場合」 この場合、約45分間という時間だけを見れば、2人の間に性的な関係があったといえるかどうかは評価の分かれるところかもしれません。しかし、大人の男女がわざわざラブホテルに入っていって、本当に何もなかったということはできないでしょう。そうすると、やはり2人の間に性的な関係があったと判断される可能性が高く、夫には「不貞」ありということで、裁判では妻による離婚の主張が認められる可能性が高いと言えます。  

ケース③

「夫が大型トラックの運転席で女性と着衣のまま抱き合っていた場合」   この場合、あくまで着衣のまま抱き合っているだけですから、2人の間に性的な関係があるとまでは言えず、夫に「不貞」ありということで離婚が認められるのは難しそうです。 しかし、密室で抱き合っているという点からすれば、2人の間に恋愛感情があり、性的関係と極めて紛らわしい行為がなされていると捉えることは可能です。そうすると、妻としては、これをきっかけに夫との関係が決定的に壊れてしまったということになれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」ありということで、離婚が認められる可能性があるということになるでしょう。  

ケース④

「夫が夜間に女性の自宅近くのスーパーに女性と2人で普段着のまま出かけて、なかよく食料品の買い物をしていた場合」   はっきり言って、この事実だけでは、夫と相手の女性との間に性的な関係があるとまで判断するのは不可能です。そのため、「不貞」ありということで離婚が成立するということにはならないでしょう。 それでは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」ありと言えるかですが、これも性的な関係と極めて紛らわしい行為がされているとまでは言い難いので、やはり離婚が認められる可能性は低いと思われます。ただ、このような行動が度々行われていることが証明できるのであれば、2人が親密な関係にあると評価することが可能ですので、その場合は「婚姻を継続しがたい重大な事由」ありとして離婚が認められる可能性も出てくると思われます。   これらのケースのように、一言で浮気が発覚したといっても、どこまでの証拠が掴めているかによって離婚できるかどうかの結論は変わってきます。そういった見極めが離婚に向けた戦略に大いに影響することになりますので、専門家である弁護士にぜひご相談いただきたいと思います。

 

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