離婚と住宅ローンには密接な関係が トラブル予防のために知っておきたい6つのこと
離婚時に、後回しにしてしまいがちですが、実は大きなトラブルの元となりやすいのが住宅ローン問題です。
なかには、早く離婚を成立させたいがために、ローンの残った住宅をそのままにする方もいます。しかし、離婚したからといってローンが無くなるわけではありません。また、ローンの残った家から出て、別の場所で暮らしていたとしても、ローンは消えません。
きちんと向き合って、一つ一つ問題をクリアにしていかなくてはならないのです。
本記事では、離婚と住宅ローンについて知っておくべきポイントをまとめました。
ローンの残額はいくらか
まず確認しておくべきなのが、ローンの残額がいくらかということです。
残額がもう少なくて、今後の支払いも問題なくできそうなのであれば、あえて住居問題の優先順位を高くしなくても良いと思います。
ただし残額がそこそこ残っていて、今後も支払いが続きそうなのであれば、離婚をする前にこれからどうして行くかを話し合わなくてはなりません。
その時に、目安の一つとして考えていただきたいのが、アンダーローンやオーバーローンという観点です。
アンダーローン
アンダーローンとは、不動産を売却したときの金額が、ローン残額を超える状態のことを指します。つまり、家を売却すれば、残ったローンを一括で返済でき、さらに手元にお金が残るという状態です。
自宅に夫婦どちらも住み続けない、かつアンダーローン状態であるのなら、自宅を売却して早期にローンを返済するという方法が考えられます。
オーバーローン
オーバーローンとは、不動産を売却したときの金額が、ローン残高より少ない状態のことを指します。つまり、家を売却して得たお金を全額ローン返済にあてても、まだローンが残る状態です。
通常、オーバーローン状態であれば、夫婦のどちらかが自宅に住み続けてローンの支払いを続けていくことになります。
が、支払いが厳しいと考えるのであれば、オーバーローン状態でも物件の売却ができる「任意売却」を検討するのも一つの解決策です。
ローンの契約内容
ローンの契約内容がどうなっているのかも確認しておいた方がよいでしょう。
ご夫婦で住宅ローンを組んでいる場合、以下のようなパターンが多いです。
①:夫が主債務者 妻が連帯保証人
②:夫が連帯債務者 妻が連帯債務者
③:夫が主債務者 妻の負担なし
(夫と妻が逆のパターンもあります。)
連帯保証人と連帯債務者の違いを簡単に解説します。
連帯債務者とは、同じ内容の再建(住宅ローン)を一緒に返済する人のことです。1つのローンを2人(あるいは複数人)で分け合うイメージが近いです。
一方連帯保証人は、主債務者(ローンを組んだ本人)がローンの支払いをしないときに、返済責任を負う人のことです。
ご自身の住宅ローンを確認して、どのような内容で契約しているかもう一度把握しておくのをおすすめします。
住宅の名義変更は難しい
仮に、夫名義で住宅を購入し、離婚をきっかけに夫が家を出て、妻が自宅に住み続けるとします。
その場合、今後のトラブルを防ぐために「名義を妻の名前に変更したい」と考える方が多くいらっしゃいます。
しかし、住宅ローンが残っている場合は、不動産の名義だけでなく住宅ローンの名義変更もしないと、銀行が難色を示すことがあります。
さらに言えば、ローンが残っているのであれば、銀行側が名義変更を認めないケースが多いです。場合によっては、のこっているローンを一括で返済するよう求められることもあります。
よって、家の名義変更は住宅ローンを完済してからになることが多いです。離婚をする際に、「住宅ローンを完済したら、名義を変更する」ことをきちんと話し合い、形に残しておくとよいでしょう。
名義変更をしても贈与税がかかる場合がある
住宅ローンを返済して、なんとか名義変更ができると思って手続きしたのに、高額な贈与税を課せられたという事例もあります。
法律では、
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離婚に伴う財産の分与によって取得した財産については、贈与により取得した財産とはなりません。
ただし、その分与に係る財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分、又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ税を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産とされます。
(相基通9-8、相基通9-8ただし書 より抜粋)
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と定められています。
基本的に、離婚の際の財産分与で得た財産には、贈与税は課税されません。しかし、上記の例にあてはまる場合は贈与税が課税される可能性があるので注意してください。
ローンの支払いが止まるトラブル
離婚と住宅ローンの問題で、よくあるトラブルが「妻が住み続けている家の住宅ローンの支払いを、夫が止めてしまう」というものです。
たとえば、不動産の名義人も住宅ローンの債務者も夫であるケースで、夫が家を出て、妻が家に住み続ける場合を考えます。(養育費を渡さない代わりに、夫が住宅ローンを払い続けると取り決めた場合が考えられます。)
しかし、このケースでは夫にとっては住んでもいない家の住宅ローンを払い続けることになります。よって、途中で返済を放棄してしまうことがとても多いのです。
住宅ローンの滞納が続けば、妻は立ち退きを迫られる可能性もあります。
かといって、住宅ローンの名義を変えるのは金融機関が認めないことが多いです。債務者を夫にしたまま、事実上は妻が支払うという形をとることは可能です。
任意売却という選択肢
・家を出ていった夫が住宅ローンを支払う約束だったが、支払いが滞り、家が競売にかけられそうだ
・夫婦どちらも家を出る予定だが、オーバーローン状態で不動産売却ができない
などの状態であれば、任意売却という選択肢もあります。
任意売却とは、オーバーローンの状態の物件をローン借入先金融機関の合意を得て売却する方法です。
任意売却の特徴を、競売(ローン借入先の申し立てにより、強制的に不動産を売却すること)と比べてみました。
任意売却 | 競売 | |
債権者の意思 | 自分の意思で売却を決められる | 裁判所が主体で、所有者の意思は関係ない |
売却価格 | 市場価格に近い値段で売却可能 | 市場価格の7割程度が多い |
持ち出し費用 |
引越し費用など |
なし |
残債の返済 | 交渉しだいで分割など無理ない範囲に調整可 | 一括返済を求められる |
プライバシー | 通常の不動産売却と同じ方法のためバレづらい | 新聞やネット上での公開・執行人による現況調査などにより、周囲の人にバレやすい |
引っ越し日 | 購入者や債権者と協議し設定 |
自由に選べない。 |
競売よりも、任意売却の方が柔軟に売却行為を行えるため、債務者にかかる負担が少なくなります。
売却額も任意売却の方が高いので、家が売れて手に入ったお金を住宅ローン返済にあてれば、はやめの完済を目指せます。
離婚時の住宅ローンにお悩みなら弁護士にご相談を
離婚に際して、残った住宅ローンの支払いをどうしようか悩んでいるのであれば、弁護士にご相談ください。
弊事務所には、離婚問題の経験豊富な弁護士が多数在籍しております。
住宅ローンの問題は、契約内容や支払状況によっては、後々大きなトラブルになりかねません。
トラブルを未然に防ぐためには、離婚するときに「契約はどうなっているのか」「支払状況はどうか」「今後家には誰が住むのか」などを整理した上で、今後の対応に関する約束事をきっちり決めておく必要があります。
弁護士がお手伝いすれば、あとでトラブルにならないようにアドバイスすることができます。
相談料は無料ですので、お気軽にご相談ください。