養育費をさかのぼって支払ってもらうことは可能?
養育費未払いの状態になってしばらくしてから相談に来られた方から、「過去に未払いとなっている養育費もさかのぼって請求できますか?」という質問をよく受けます。
結論から申し上げますと、さかのぼって請求できる場合もありますが、離婚時までさかのぼって未払い分を受け取ることは難しいと考えられます。
実際の裁判例も結果は様々で、なかには裁判所が相当と認める範囲で過去にさかのぼって未払い養育費の請求を認めた例もあります。
が、多くの裁判例や実務の場では、養育費の調停申立がされた時点など、明らかに請求の意思がある時点からの請求しか認めていません。
過去にさかのぼっての請求が難しい理由や、対策について説明します。
そもそも過去にさかのぼって請求するケースとは
過去にさかのぼって請求するケースで特に多いのが、以下のようなものです。
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離婚した日:令和元年10月1日(A)
養育費請求日:令和3年12月1日(B)
離婚時の養育費に関する取り決め:なし
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このようなケースで、(B)の時点以降の養育費を請求することは何ら問題はありません。
過去にさかのぼって養育費を請求するというのは、(A)と(B)の間に発生している養育費を請求するということです。
しかし、冒頭でも説明しましたとおりこのように過去にさかのぼって請求できる例はまれです。
裁判所がそう判断する理由として、
・基準日(いつから養育費を支払うべきか)があいまいである
・過去分を一度に請求すると金額が大きくなり、支払う側の負担が増える
といったものがあると考えられます。
過去分を支払ってもらうための対策方法
過去に発生した養育費を裁判で請求するのはなかなか難しいというお話をしました。
では、どうすれば十分な養育費を受け取れるようになるのでしょうか。
一番は、
離婚協議の段階で、養育費についてきちんと交渉をしておく
ことです。
合意書などを作成しておけば、その後で未払いとなったときの請求で有利に交渉を進められます。
ただ、この記事を読まれている方の多くは、すでに離婚されておられる状態ではないかと思います。過去に戻って協議をやり直すことはできませんから、別の手を考えなくてはなりません。
となると、
早急に内容証明郵便を送付する、調停を申し立てる
という方法も考えられます。
多くの実例では、「養育費を請求する意思が明確になった」タイミングからの養育費請求を認めています。
つまり、早く請求をすればするほど、その日が養育費請求の基準日となるのです。
過去の分をさかのぼって支払ってもらうことが難しくても、将来的な養育費を少しでも多く確保できます。
離婚して以降の養育費を請求したいのであれば、
相手に直接交渉・請求する
という手段も考えられます。
前述の通り、裁判所を通じて養育費請求をした場合、これまでの裁判例では「過去分をさかのぼって請求する」ことには消極的です。
よって、裁判所に申立てをしたとしても、過去分の養育費が認められる可能性は低いでしょう。
しかし、相手に求めることは全く違法ではありません。相手に事情を説明し、相手が任意に支払ってくれるのであれば、問題はないのです。
したがって、過去分もまとめて養育費を請求したいのであれば、まずはご自身が相手と直接交渉することがおすすめです。
当事者同士で、話し合いを進めるのであれば、以下の点に注意が必要です。
・やりとりは書面など後に残せるもので行う
・いつからいつまでの分を、いくら請求したいのか明確にする
・なぜその金額が必要なのかを証拠も含めて説明する
・感情的にならず、理性的に必然性を示して説明をする
まず、やり取りは書面やメール、LINEをはじめとするSNSなど、後に残せる形で行いましょう。
交渉の記録が残っていれば、言った言わないのトラブルになることを避けられますし、後ほど交渉が決裂して裁判所を挟んだ手続きを取る時の証拠となります。
そして、いつからいつまでの養育費で合計いくらを請求したいのかを明確にしましょう。金額や条件が定まっていないままに請求しても、相手は納得できません。
当事者同士での交渉では、いかに相手を納得させて、払う意思を引き出すかが重要になります。きちんと最初に、請求する額を明記しましょう。
また、なぜ養育費が必要なのかの理由を証拠も合わせて説明すると、払ってもらえる可能性が高まります。
養育費を未払いにする理由の一つに、「子供ではなく、養育親がお金を使い込んでいるのではないか」という不信感があります。
子供のためにはお金を払うこともやぶさかでないが、使いみちが明確でないと払いたくない人がたくさんいるのです。
例えば、学費や習い事の費用を提示して「子育てにこれだけお金が必要だ」ということを説明すれば、納得してもらえるかもしれません。実際に支払いをした明細書や、通帳の履歴を提示すれば、より信用性も高まります。
そして、感情的にならないこともとても重要です。離婚に関する交渉では、どうしても相手に対して感情的になってしまいがちです。
「養育費の未払いがずっと続いているがどういうつもりだ!」と強い口調で相手を責め立てるような交渉では、相手も条件をのんでくれません。
ご自身の感情は一度おさえて、「なぜ必要なのか」「いくら必要なのか」といった説明を証拠も踏まえて行えば、相手からの理解を得やすくなります。
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弊所では、離婚や養育費請求の経験豊富な弁護士が皆様のご相談をお伺いしております。
多くの方が、「弁護士に依頼するのは最終手段」と考えてらっしゃいますが、お悩みが発生した初期の段階でご相談いただければ、トラブルの深刻化を防ぐことができます。
過去分の養育費を相手に請求したいとお考えなのであれば、弁護士にご相談頂ければ適正額をアドバイスすることも可能です。
どうぞお気軽にご相談ください。