離婚事件に弁護士を付ける

 

離婚事件に弁護士を付ける

 

弁護士 市ノ木山朋矩 (奈良法律事務所・奈良弁護士会所属)

 

1 はじめに  
 最近は「離婚は珍しいことではない」と言われがちですが、珍しくないということは、いつ自分が離婚の当事者になるか分からないということです。一般的には、「結婚したのだから離婚したくない」と思われる方が大半だと思われますが、そうも言っていられない状況になることがやはり少なくないのが現状です。  しかし、いざ離婚しようと思っても、離婚までにどのように話が進んでいくのか、また、どのように進めるべきなのかは、ネット記事を読んでもはっきりしないことも多いと思います。弁護士に依頼した方がよいのか、依頼するほどでもないのかも基準が明確でないでしょう。  そこで、今回は、離婚を考えてから実際に離婚に至るまでの流れに沿って、弁護士を付けるとどういうメリットがあるのかをお話しさせていただきます。これを読んで、「離婚のことを弁護士に話してみようかな」と思っていただける方が増えますと幸いです。

2 離婚を決めてから離婚協議を開始するまで
 離婚を決めると多くの場合、夫婦のどちらかが家を出て別居することになると思います。一旦別居すると、事実上、元の家にはなかなか戻れないと思われますので、別居にも準備が必要です。 このような場合に、弁護士に相談するメリットがあります。と言いますのも、弁護士は、今後、離婚までの間に、そして離婚後に相手にどういう請求をするか想定できていますので、そのために必要な物や資料を確保することをアドバイスできます。別居した後に、「そういえばあれを持ってきておけばよかった」などと後悔するのは大変もったいないことです。 以上のことは、別居の際に元の家に残る側にも同じことがいえます。別居の際に、確保されてしまう可能性がある物や資料は、それを防ぐために万全の措置を講じておくべきことも多いといえます。これにも弁護士の経験に裏付けられたアドバイスが不可欠です。また、この時点で、弁護士に継続的なサポートを依頼しておけば、困ったときにいつでも相談することができ、離婚に向けて良いスタート(少し、変な言い方ですが。)を切ることができます。

3 離婚協議を開始する段階
 離婚の条件面で食い違いがあるときは、まずは夫婦の間で協議(話し合い)がなされます。協議は夫婦間で行うのがスタートだと思いますが、話し合いを進めるうちに話が平行線となったり、またそもそも最初から話し合うことができないような夫婦関係にある場合もあると思います。 このように、夫婦間で協議ができなくなった場合には、弁護士を付ける意味があります。弁護士は、依頼を受けた一方の代理人という立場で、協議のための交渉の窓口となります。これにより、依頼者は相手と直接に話し合いをしなくて済むことになり、相当のストレスフリーになります。また、弁護士は、離婚条件について法的に正確な知識を使って、説得的に相手と協議をすることができますし、それだけでなく、相手との協議の中で駆け引きを行い、依頼者の満足を勝ち取るべく努力することになります。駆け引きとは、何らかの尺度や基準(法的な考え方といえます。)があって初めて行えるものです。夫婦がお互いに自分の希望ばかりを述べていては解決に至らないこともありますが、法的な考え方を持ち出すことで、冷静かつ正味なところの議論ができるようになります。

4 離婚協議がまとまらない場合
 離婚協議をするにあたって弁護士を付けることで、感情的になりつつある離婚条件を冷静に話し合うことができることは確かです。しかし、それでも、相手にとって、依頼者が付けた弁護士はやはり「味方」ではありませんので、協議では離婚条件がまとまらないこともあります。このときに、次のステージとされるのは、離婚調停です。 離婚調停は、家庭裁判所において、約1か月から1か月半に一度の頻度で行われ、調停委員という第三者が待つ部屋に、夫婦が交互に入って、お互いの言い分を調停委員ごしに相手に伝え合うものです。夫婦のいずれの側でもない第三者が間を取り持つことで、協議の場合に比べるとスムーズに話が進むことも多いといえます。 しかし、調停委員は夫婦どちらの味方でもないため、話が進む可能性は上がっても、自分が有利になる、又は、不利にならないためには、自分で議論をリードしていく必要があります。そのために頼りになるのが弁護士です。弁護士は、調停前に依頼者の言い分をまとめた書面を裁判所と相手に提出したり、調停でどのような話になるかを前もって依頼者に伝えることができます。そして何よりもお役に立てるのが調停当日です。調停では、自分の言い分を伝えることが重要ですが、それと同じくらい相手の言い分を聞き、適切に対処していくことも大切です。調停というのは、ただでさえ慣れない場で緊張しますし、加えて専門用語も飛び交うため、依頼者がお一人で行かれてはなかなか上手く立ち回ることができないことも多いと思います。そんなとき、隣に座る弁護士は時に冷静に、時には熱く、依頼者の思いを代弁します。しかも、それが法的な根拠に基づくものですので、相手も調停委員も耳を貸してくれることでしょう。

5 終わりに
 いかがでしたでしょうか。 離婚決意時、離婚協議時、離婚調停時のそれぞれにおいて、弁護士に依頼するメリットを説明させていただきました。結論的には、どの段階でも弁護士を付けることにメリットがあるのですが、さらに共通して言えることは、弁護士を付けるのならば早いほうが良いということです。これは、離婚調停時よりは離婚協議時といった具合だけでなく、離婚協議時の中でも話し合いの序盤のほうが良いといえます。早く弁護士を付けることで、迅速な解決にもつながりますし、何よりも“お得”です。 最後になりますが、以上を踏まえて、実際にご依頼いただくとしても、「この弁護士で大丈夫かなあ」と思われることもあるかもしれません。ここで、大丈夫な弁護士とは、依頼者に共感し、進むべき道を示してくれる弁護士だといえます。弁護士法人iでは、依頼者に寄り添い、ベストな道筋をご提案することができる弁護士がお待ちしておりますので、離婚で悩まれた際には、ぜひご相談にお越しいただきたいと思います。
 

 

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