社長・経営者の離婚について
社長・経営者の離婚について
社長、離婚には経営者特有の問題があることをご存知ですか?
会社経営者の方が離婚される場合(または、会社経営者の方と離婚する場合)、会社にお勤めの方が離婚される場合とは異なる点があり、注意すべき点がいくつかあります。
そこでここでは、会社経営者の離婚に関して、
1 相手が会社経営に関わっている場合について
2 財産分与について
の2点について、特有の問題点に関するご説明をさせていただきます。
1 相手が会社経営に関わっている場合について
①妻(夫)が自分の経営する会社の従業員ですが、離婚時に、解雇することができますか?②妻(夫)が自分の経営する会社の役員ですが、離婚時に、解任することはできますか?
という相談を良くいただきます。そこで場合に応じてお答えします。
①妻(夫)が従業員だった場合の解雇について
比較的大きな会社であっても、自分の妻や夫を従業員として雇用しているケースは多いかと思います。このような場合、離婚した後でも、当事者が同じ会社にいるというのは、当事者同士も、また他の従業員の方も気まずいということが容易に想定できます。
結論からいえば、離婚のみを理由として解雇することはできません。ですから、労働法にのっとり、相手の方とよく話し合う必要があります。解雇の可能性については、勤務実態等を詳細に検討する必要があります。無理に解雇してしまうと、離婚とは別に損害賠償請求をされてしまう恐れもありますから、注意が必要です。
退職を望まれる場合は、一度専門家にご相談される方が賢明でしょう。
②妻(夫)が会社役員だった場合の役員解任について
役員に、妻や夫(ときにはその親族)がいることも非常に多いと思います。離婚した後に役員に残られて経営権の一部を握られると言うのは気分のいい話ではないでしょうし、一方で、離婚後も会社経営の責任(損害賠償等)を負わされるかもしれないというのも怖いですよね。
この場合は、会社法の規定に基づき、解任することが必要です。基本的には、株主総会を開催して、解任することが必要です(会社法339条1項)。法的な手続きを適法に行わない場合は、解任自体がひっくり返されてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
また、解任はできたとしても、解任するにあたり、正当な事由がない場合は、離婚とは別に、会社は損害賠償請求される恐れがあります(同条2項)。離婚したこと自体は、正当な事由とは言いにくいと思いますので、慎重に解任事由を検討すべきだと思います。
話し合いが難しい、後々の憂いを残したくないという場合は、専門家にご相談いただく方が良いでしょう。
2 会社財産・財産分与の扱いについて
(1)会社財産について
会社財産や財産分与について、次のような質問をよくお受けします。
①会社名義の車や携帯電話を普段の生活で使ってきましたが、離婚した場合どうなりますか?
②会社財産は離婚時の財産分与の対象となりますか?
というものです。
①については、会社財産と個人の財産はやはり別のものですから、離婚したときには、会社に返還しないといけません。
また、②についても同じ理由から財産分与の対象とならないのが原則です。
会社から離れる方からすると、普段使っている物を取り上げられるような形になりますが、本来は会社の物を無断(または使用貸借という契約に基づいて)で使っていたのですから止むをえません。むしろ、会社の物で事故を起こしてしまった場合などを考えると、返還するほうが、お互いリスクがないといえるでしょう。
ただ、会社の財産といえるのか、個人の財産といえるのか微妙なものもあるかと思います。また、相手方に売却したり、贈与したりするということも一つの手段かと思います。判断に迷われるとき、契約をきちんとしておきたい場合は、後々のリスクを回避するために、税理士や弁護士などにご相談いただくことをお勧めします。
(2)株式の問題
会社の株式に関して、
「経営する会社の株式も財産分与の対象になるのですか?」
というご質問もよくお受けします(また、お気づきになられていない方もいます)。
会社株式は、経営権にも関わるため、離婚時に財産分与の対象となり、離婚相手に株式が渡すことになるかどうかは大きな問題です。
答えとしては、会社の株式の取得時期や経緯によって財産分与の対象となるかどうか分かれることになります。ですから、取得時期や取得のための資金の出所、そして仮に財産分与の対象となった場合に、その対処法を検討しておくことが必須です。
会社の存続にもかかわりかねない問題になるため(例えば、全く知らない第三者に株式がわたってしまい、経営権を乗っ取られるなど)、ご心配な方は、一度ご相談ください。
(3)財産分与の割合の問題
「財産分与は必ず「2分の1」ずつ分けないといけない(もらえる)のでしょうか?」
財産分与は、夫婦双方が2分の1ずつ分けるのが原則(「2分の1ルール」)となっているのが実情です。しかし経営者の中には、自分の才覚により築いた財産を、経営に関与していなかった相手に半分も渡さないといけないのは納得がいかない、という方もいらっしゃいます。
この場合、現在の財産をいかにして築き上げたのか、資産の内容、その中で相手方はどの程度貢献したのか(寄与したのか)など様々な事情を考慮し、その結果、「2分の1ルール」が適用されず、財産分与の割合が変わる場合があります。
他にも、経営者の離婚には、会社勤めの方とは異なる独特の問題もいろいろと生じます。紛争に発展することも多々ありますので、お困りのこと(出来れば問題が大きくなる前に)が生じた場合には、弁護士に一度ご相談ください。