「重婚」 弁護士黒田充宏(本部 東大阪法律事務所・大阪弁護士会所属)
「重婚」
弁護士黒田充宏(本部 東大阪法律事務所・大阪弁護士会所属)
重婚とは文字通り配偶者あるものが重ねて婚姻することです。
ここでいう重婚は法律婚をいい事実婚は含みません(内縁)。
もともと婚姻届では重婚の禁止その他の要件に違反しないことを認めた後でなければ受理されませんので(民法740条)重婚であることが明白な婚姻届であれば受理されることはありません。 従って,重婚が成立するのは戸籍上重婚でないか,何らかの原因によって重婚であることが戸籍担当者に判明しない場合であることが考えられます。
たとえば失踪宣告において死亡擬制された配偶者が実は生存しており,帰宅して失踪宣告が取り消されたがその間に他方配偶者が既に婚姻していたという事例においては重婚状態が生じ得ます。
もっとも,交戦状態から何十年と経過している現在の日本国においてこのような稀なケースはほぼないのではないでしょうか? しかし,婚姻関係は日本人同士だけにとどまりません。たとえば日本に居住する韓国人が日本人と婚姻したが,さらに韓国国内で韓国人と婚姻していたような事案では日本国における婚姻と韓国法における婚姻をしていた場合には重婚が生じます。
理論上あり得るがまずないだろうと高をくくっていた私ですが,このようなケースを過去に取り扱ったことがあります。
事案としては,在日韓国人Aさんが日本人妻Xと婚姻後,韓国にてYと婚姻し数十年経過後に死亡し相続が発生したという事案です。
このような場合に相続の準拠法(どの国の法律によりAの相続関係を規律するか)が問題となります。この場合Aは韓国籍なのでAの相続関係は韓国民法により規律されます(法適用に関する通則法36条) では,韓国民法によればどのようにXYの相続分は定まるのでしょうか? この点韓国法によると、後婚は韓国民法では取り消し事由であり(韓国民法816条1号),取消されるまでは有効として扱われます。 そうすると,相続人である配偶者が2名居る場合の配分が問題となるが,本来配偶者と重婚配偶者の,それぞれの相続分は本来の配偶者の相続分の2分の1ずつ分け合うとするのが韓国判例である(韓国 大法院判例1996年12月23日95タ48308) 結局XYは本来の配偶者の相続分を2分の1ずつ分け合うということになった。 このように、実務上重婚があり得ないわけではありません。また、重婚事例が渉外親族法にかかる場合にはかなり、複雑な問題を孕みますので、まず弁護士にご相談されることをお勧めします。