「離婚と福利厚生」 弁護士 黒田充宏 (本部東大阪法律事務所・大阪弁護士会所属)

 

「離婚と福利厚生」

 

弁護士 黒田充宏 (本部東大阪法律事務所・大阪弁護士会所属)

 

離婚や別居した夫婦には少なからず経済的な変化が多数あります。
今回は法律相談で頻出するQ&Aをご紹介します。

1 離婚と家族手当
Q: 子どもを連れて離婚した妻Aが自分の勤務する会社Bに「家族手当」を請求しました。
   しかし、Bの支給要件には「妻子を有するもの」に支給するとあり、男性しか支給対象となっていませんでした。
   この場合Aは家族手当を請求できるのでしょうか?

A: 労働基準法4条は男女同一賃金の原則をさだめており、
   男性だけに支給するとの定めは賃金について性別による差別的取り扱いをするものであり、同条に違反します。
   よって、Aさんは男性と同様に家族手当を請求することが出来ます(仙台高等裁判所平成4年1月10日参照) 。
   その手段としては労働基準に違反する取り扱いについては労基署の是正勧告指導、
   個別紛争解決制度(あっせん)を利用することも可能です。


2 別居と住宅手当
Q: 子どもを連れて別居したAさんは自分の勤務するB会社に住宅手当の申請をしたところ、
   Bは夫婦いずれかの収入が多い方を世帯主と判断して、
   世帯主にのみ住宅手当を支給する規定になっている為に、Aさんの申請は認められませんでした。
   Aさんは住宅手当を請求できるのでしょうか?

A: 前問とことなり、「世帯主」による区別は男女による区別ではありません。
   よって、夫か妻のいずれか収入の多い方を「世帯主」として企業が基準を設けても一定の合理性があり、
   労働基準法に違反するものではありません(東京地方裁判所平成1年1月26日参照)。
   従って、Aさんは住宅手当をもうらうことはできません。


3 別居と退職金
Q: 夫が駆け落ちして蒸発してしまいました。会社も無断欠勤しており、会社は夫を退職扱いにして
   妻Aに退職金を支払うと言っているがAは退職金を受領できるでしょうか?

A: 退職金も労働基準法上は賃金とされています(昭和22,9,13発基第17号)。
   賃金には労働者への直接払いの原則(労基法24条)が適用されます。
   従って退職金は従業員本人でしか受領することは出来ません。
   もっとも本人の使者(つかいのもの)に対して支払うことは可能です。
   しかし、本問のように駆け落ちした主人と妻との利害の一致はないので
   Aさんが退職金を使者として受領することはできません。
   結局、この場合妻Aが退職金を受領することは出来ません。

 

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